フェルマーの最終定理(Simon Singh (原著), 青木薫 (翻訳)/新潮社)感想

x^n + y^n = z^n

この方程式は、nが2よりも大きい場合に整数解を持たない。

私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
本書は、あきらめちゃいけないなんて説教くさいことは言っていない。あきらめずに挑み続ければ答えにたどり着けるなんてことも言っていない。ただひたすらにこの問題に立ち向かってきた人間たちの姿を描く。
フェルマーが残したものは、世界の見通しを悪くする壁だったのかもしれない。その向こう側に絶景を予感させるものだったのかもしれない。そう感じた人たちは挑み続けた。まだ見ぬ絶景を求めて、暗闇の中を手探りで進んだ。立ち塞がる壁を打ち崩そうとした。例えこの定理が証明できなくとも、そこに至るための道を切り開いていった。そうして得られた眺望は、それを初めて目にする者たちに、どのように映ったのだろう。
そうやって自ら新たな眺望を得られた人たちをとてもうらやましく思う。でもまぁオレはオレでがんばらないと、なんてちょっと元気付けられもした。自分だって手の届くところから、そうやって少しずつ世界を切り開いていきたい。