理性はどうしたって綱渡りです(原著:ロバートフォグリン/翻訳:野矢茂樹, 村上祐子, 塩谷賢/春秋社)感想

理性はどうしたって綱渡りです
あなたは培養層に浮かぶ脳髄で、あなたが見るもの感じるもの全ては電極の刺激が見せる幻であるとすると、一体あなたは何を確実に知っていると言えるのか?
そういった挑戦に対し、馬鹿馬鹿しいの一言で退けずに、穏健に答えようとしたのがこの本だ。人間の想像力、理性が作り出す概念とどう折り合いをつけるか、ユーモア交じりに著者は語る。
この手の問は誰もが一度は考えたことがあるかもしれない。一番有名なのはルネ・デカルトの「我思う、ゆえに我あり」か。例えこの世が幻でも、その幻を認識する主体である私は絶対確実に存在するといったもの。
しかし、そんなことを考えたところで、想像することはできても信じることはできないよね。信じられないという理由で私たちは切り捨てる。日常生活においては理性より情念が優先されるのだ。
でも、これはこれで危うい。理性的に考えてみよう。私たちがこの世界が現実であることを証明不可能にもかかわらず信じているのだとすると、明らかに怪しげな新興宗教なんかを信じてる人をどう改心させたらいい?
そんな理性の罠。