水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪(佐藤友哉/講談社ノベルス)

水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社ノベルス)
読了。鏡家サーガ3作目。(フリッカー式エナメルを塗った魂の比重水没ピアノ)
壊れ気味の人間の描写が素晴らしい。少女を護っているつもりの少年、現実の彼女より会ったことの無いメルトモに思いを馳せる青年、そして密室での贖罪惨殺劇。互いに係わり合いが無いように思える3つの視点で紡がれる物語は、最後のどんでん返しで綺麗に収束する。エナメルみたいに破綻しているとしか思えないオチだったらどうしようかと思ったが、杞憂だった。
帯に「主題(テーマ)は“純愛”」とあるが、壊れた人たちの壊れているがゆえに真っ直ぐに歪んだ純愛だ。それがリアルで素敵にグロい。