Missing 13巻(甲田学人/電撃文庫)

Missing〈13〉神降ろしの物語・完結編 (電撃文庫)
読了。
著者のオカルト・都市伝説に関する膨大な知識をバックグラウンドにして作られたこのMissingシリーズも、ついに終わりを迎えてしまった。
まさに都市伝説DJとも言える著者が、都市伝説をサンプリング&リミックスし展開させているかの様な作品だった。著者はこのタイプ以外の物語を書けるんだろうか?なんてことを読み始めた頃は思っていたけど、この作品は人間の心の弱さと狂気といった割と普遍的なことをきちんと描けているのでので、余計なお世話だねw オカルトものじゃなくても凄くダークなものを書きそうだ。

時代が、国が、生まれが、人の“天分”を決める。例えばこの時代に生まれた者が、魔術に向かんのも時代の流れよ。だが時に現れる天才や、架空の主人公なぞを見て、人は勘違いするのだな。天の才を持つものの語る理想を、つい自身にも実現可能なものと錯覚してしまうのだ。

小崎摩津方の台詞(11巻)の引用だけど、これに著者のこの作品に対する思想が入っているんじゃないかな。努力しても理想に届かないと感じたとき、自分には欠けているものを補いたいと願ったとき、オカルトに走る人々。そこに付け込むように存在するオカルト儀式や都市伝説、それを利用する魔女、魔術師。こういったもので構成された物語は気持ち良いぐらい狂気に満ちている。最後の最後までハッピーにはならないが、それを美しいと思っちゃえる作品だ。